運送の「月給40万円」は、4割が歩合と残業です|2024年問題で守れなくなる求人票
全日本トラック協会の調査(2024年度版・有効回答565社)では、男性運転者の賃金+賞与の1か月平均は404,100円で、その構成は固定給210,500円(58.4%)、変動給149,800円(41.6%)、賞与43,800円です。大型では変動給が178,900円(47.1%)に達し、その内訳は歩合給90,600円(50.6%)と時間外手当76,200円(42.6%)です。2024年4月から自動車運転業務の時間外労働は年960時間が上限となったため、この変動給が構造的に削られます。一方で同じ調査で普通車は固定給73.5%、男性事務員は85.4%を実現しており、固定給中心の設計が業界内で不可能ではないことを示しています。求人票の金額を固定給で作れるかどうかが、応募数と定着の両方を分けます。
求人票に「月給40万円」と書いてある。嘘ではありません。
ただ、その40万円がどう作られているかを見ると、これから守れなくなる会社が相当数あります。
ドライバーの月収の内訳
全日本トラック協会の調査(2024年度版/有効回答565社)による、男性運転者の賃金構成です。
| 金額 | 割合 | |
|---|---|---|
| 固定給 | 210,500円 | 58.4% |
| 変動給 | 149,800円 | 41.6% |
| 賞与 | 43,800円 | — |
| 合計 | 404,100円 |
約4割が変動給です。そして大型になると、この比率が上がります。
| 車種 | 固定給 | 変動給 |
|---|---|---|
| けん引 | 59.5% | 40.5% |
| 大型 | 52.9% | 47.1% |
| 中型 | 57.8% | 42.2% |
| 準中型 | 66.6% | 33.4% |
| 普通 | 73.5% | 26.5% |
大型は変動給が47.1%。ほぼ半分です。
変動給の中身は、歩合と残業です
その変動給が何でできているか。男性運転者の平均では、歩合給が67,300円(44.9%)、時間外手当が72,600円(48.5%)。**大型では歩合給90,600円(50.6%)、時間外手当76,200円(42.6%)**です。
つまり、月収40万円のうち約15万円は「たくさん走った月」の金額だということになります。
そこに2024年問題が乗ります
2024年4月から、自動車運転業務の時間外労働には年960時間という上限が設けられました。
何が起きるか。変動給のうち時間外手当の部分が、制度として削られていきます。 会社が意図的に減らすかどうかとは関係なく、上限が効いてくる分だけ構造的に下がります。
そして求人票に出した金額は、その変動給を含んだ金額です。
求人票:月給40万円 実際:残業が抑えられた月は、そこに届かない
入った人が「聞いていた話と違う」と感じた瞬間に、採用にかけた費用は消えます。 業界全体に、この構造の定着トラブルが埋まっています。
答えは、同じ調査のなかにあります
ここが大事なところです。「運送だから変動給が高いのは仕方ない」——そうではありません。
同じ調査で、普通車は固定給73.5%、**男性事務員は固定給85.4%**を実現しています。同じ業界の、同じ会社のなかで、すでに成立しているということです。
つまり固定給中心の設計は、運送業で不可能なものではありません。大型が特に変動給に寄っているだけです。
やることは「金額を下げる」ではありません
誤解されやすいので明確にしておきます。総額を下げる話ではありません。同じ総額のなかで、固定と変動の比率を組み替える話です。
求人票に出す金額の土台になる部分だけでも固定に寄せられないか。その一点です。
ただし、これは思いつきで基本給を上げると事故ります。基本給を上げれば、時間外の割増賃金の単価も上がります。 総額が意図せず動きます。配分を変えれば、月によって得をする人と損をする人も出ます。
だから賃金規程の設計そのものが要ります。就業規則・賃金規程の改定は社会保険労務士の業務です。当社が窓口となり、中峯社労士事務所と連携して進めます。運送業の賃金設計は、社労士にしかできない介入です。
「大阪だから安い」は、数字では成り立ちません
ついでに、よく聞く話も確かめておきます。
| ブロック | 賃金 | 賃金+賞与 |
|---|---|---|
| 関東 | 374,700円 | 435,000円 |
| 近畿 | 364,100円 | 404,800円 |
| 中部 | 365,300円 | 397,200円 |
| 全国平均 | 360,300円 | 404,100円 |
近畿は全国平均とほぼ同水準。関東より月3万円ほど低い、という程度の差です。
「大阪だから安く出せる」も「大阪だから採れない」も成り立ちません。差がつくのは金額ではなく、その金額の作り方です。
外国人ドライバーでも、話は同じです
むしろ強く効きます。外国人材が仕事を選ぶ決め手は手取りで、残業で稼げる量も見られています(外国人材が仕事を選ぶ決め手)。ところが残業の天井は下がりました。残業前提の設計は、日本人にも外国人にも同じように破綻します。
しかも運送は育成就労の対象外で、転籍制限という仕組みもありません。条件が合わなければ、そのまま移られます(運送は育成就労を待てません)。
外国人材の採用を考える前に、まず求人票の40万円が固定給で何割かを確かめてください。そこが弱いまま人を入れても、同じところから抜けていきます。
まとめ
- ドライバーの月収404,100円のうち、固定給は210,500円(58.4%)。変動給が41.6%(大型は47.1%)
- 変動給の中身は歩合給と時間外手当(大型=歩合50.6%・残業42.6%)
- 2024年4月から時間外は年960時間が上限。変動給は構造的に削られる
- 求人票の金額が変動給込みだと、入社後に届かない。定着トラブルの主因になる
- ただし同じ調査で普通車は固定給73.5%、事務員は85.4%。業界内ですでに実現している
- 総額を下げるのではなく固定と変動の比率を組み替える。基本給を上げると割増単価も動くので、賃金規程の設計が要る
- 近畿は全国平均とほぼ同水準。「大阪だから」は理由にならない
当社は人材のご紹介も派遣も行いません。ドライバーを送って手数料をいただく立場ではないので、「まず求人票を直しましょう」と言えます。
出典:公益社団法人全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」(調査対象4,625社/有効回答565社)
いまの求人票を1枚お持ちいただければ、固定給が何割かを一緒に数えるところから始められます。採用・求人票の設計からご相談ください。
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