運送と製造は、派遣も紹介もできます|ただし3つの落とし穴があります
労働者派遣が禁止されているのは港湾運送業務・建設業務・警備業務・医療関連業務の4業務、有料職業紹介が禁止されているのは港湾運送業務と建設業務に就く職業の2つです。したがって道路貨物運送(トラック運転)と製造業務は、派遣も有料職業紹介も適法です。ただし落とし穴が3つあります。第一に、同じ運送でも港湾運送業務は建設と同様に派遣・紹介とも禁止です。第二に、日雇派遣が原則禁止であることに加え、貨物自動車運送事業輸送安全規則により2か月以内の期間を定めて雇用した者を運転者に選任できないため、派遣ドライバーは2か月超の契約が必要です。第三に、製造派遣は事業所単位・個人単位ともに原則最長3年で、個人単位で3年を超えて受け入れると労働契約申込みみなし制度が発動します。
建設の作業員は、派遣も紹介もできませんという記事を書きました。今回はその裏返しです。
運送と製造は、派遣も有料職業紹介もできます。 建設とは前提が違います。
ただし、そのまま素直に進めると踏む落とし穴が3つあります。
まず、禁止されているのはどこまでか
法律は、禁止対象を限定列挙しています。
労働者派遣が禁止されている4業務 港湾運送業務/建設業務/警備業務/病院等の医療関連業務
有料職業紹介が禁止されている職業(職業安定法32条の11) 港湾運送業務に就く職業/建設業務に就く職業
道路貨物運送(トラック運転)と製造業務は、どちらのリストにも入っていません。 だから派遣も紹介も適法です。建設で取れなかった紹介手数料も、運送・製造では取れます。相場は定額型で1名あたり10〜30万円程度です。
ここまでは、素直な話です。
落とし穴① 同じ「運送」でも、港湾は建設と同じ壁
リストをもう一度見てください。港湾運送業務は、派遣も有料職業紹介も禁止です。建設とまったく同じ扱いになっています。
つまり——
- トラックで運ぶ = 適法
- 港湾での荷役 = 建設と同じく両方禁止
自社の業務が倉庫や港に広がっている会社ほど、ここが曖昧になります。「うちは運送だから大丈夫」で進めると、業務の一部が禁止領域に入ります。
自社の業務のどこまでが道路貨物運送で、どこからが港湾運送業務なのか。 この線を先に引いてください。育成就労でも同じ線が効きます(物流倉庫は対象、自動車運送業は対象外=運送は育成就労を待てません)。
落とし穴② 派遣ドライバーは「2か月超」が必須
これがいちばん誤解されています。
まず、日雇派遣(30日以内)は原則禁止です。2012年10月施行の改正派遣法によります。
そのうえで運送には固有の縛りがあります。貨物自動車運送事業輸送安全規則により、2か月以内の期間を定めて雇用した者を運転者に選任できません。
結果として、派遣ドライバーは2か月を超える契約が必要になります。
ここから導かれる結論は明確です。
「繁忙期の1か月だけドライバーを借りる」は成立しません。
短期で回すと、国土交通省の行政処分の対象になります。この形の提案が来たら、その場で断ってください。提案してくる側が制度を分かっていないという情報でもあります。
落とし穴③ 製造派遣は3年で「直接雇用みなし」が発動
製造への派遣は2004年3月に解禁され、当初は最長1年、2007年3月から最長3年になりました。2015年の改正で26業務区分が廃止され、事業所単位・個人単位ともに原則最長3年に統一されています。
問題は、その先です。
個人単位で3年を超えて受け入れると、労働契約申込みみなし制度が発動します。 派遣先が直接雇用を申し込んだものとみなされる仕組みです。
漫然と延長していると、想定していない雇用関係が生じます。逆に言えば——
3年目は、直接雇用へ切り替えるかどうかの判断の時期です。
ここを最初から織り込んでおくと、3年目に慌てません。派遣で来てもらって仕事ぶりを見て、3年目に直接雇用へ移す。手順として設計すれば、無理のない採用の形になります。
それでも、当社は紹介も派遣もしません
正直に書いておきます。
運送・製造では紹介手数料が取れます。それでも当社は人材のご紹介も労働者派遣も行いません。いずれの許可・登録も受けていないからです。
だからこの記事は、「うちに頼んでください」という話ではありません。御社のところに来る提案が、適法な取引かどうかを見分けるための整理です。
判断の順番は、これだけです。
- その業務は港湾運送業務ではないか(該当すれば派遣・紹介とも不可)
- ドライバーの派遣なら、2か月を超える契約になっているか
- 製造派遣なら、個人単位で3年を超えていないか。3年目の判断は決まっているか
この3つを聞いて答えられない相手とは、取引しないほうが安全です。
そして、人を借りる前に確かめること
制度上できるからといって、それが最善とは限りません。
運送の場合、そもそも求人票の金額が守れる構造になっているかを先に確かめてください。ドライバーの月収404,100円のうち変動給が41.6%(大型は47.1%)で、2024年問題でこの部分は構造的に削られます(運送の「月給40万円」は、4割が歩合と残業です)。
この構造を直さないまま人を借りても、同じところから抜けていきます。 借りるコストのほうが、直すコストより高くつくことは珍しくありません。
まとめ
- 派遣禁止は港湾運送・建設・警備・医療関連の4業務、有料職業紹介禁止は港湾運送・建設の2職業(職安法32条の11)
- したがって道路貨物運送と製造業務は、派遣も紹介も適法。紹介手数料の相場は1名10〜30万円程度
- 落とし穴①港湾運送業務は建設と同じく両方禁止。倉庫・港に業務が広がる会社は線引きが要る
- 落とし穴②派遣ドライバーは2か月超の契約が必須(日雇派遣の原則禁止+貨物自動車運送事業輸送安全規則)。「繁忙期だけ」は成立しない
- 落とし穴③製造派遣は原則最長3年。個人単位で3年超は労働契約申込みみなし制度が発動。3年目は直接雇用の判断時期
- 当社は紹介も派遣も行わない。来た提案が適法かを見分けるための整理として使ってください
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